エリクソンの発達段階とは、人間の一生のなかで出てくる心理的な課題や、課題を達成したときに獲得する要素を分類したものです。年齢に応じた「8つの段階」に分けられています。
また、エリクソンの発達段階は、子育てなどの悩みにぶつかったときに、解決の糸口にもなる考え方といわれています。
この記事では、エリクソンの発達段階の概要や、8つの過程について詳しく紹介します。
エリクソンの発達段階について知りたい大人の方や、幼い子どもを持つ保護者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
エリクソンの発達段階とは
エリクソンの発達段階とは、人間の一生を8段階に分けて、心理的課題やその課題の達成により、獲得する要素を分類したものです。
エリクソンは、それぞれの時期に起こりうる発達課題を「心理社会的危機」という形で示しました。
この「心理社会的危機」を解決できなかった場合は、成長の過程の中で、次の段階に進みづらくなると考えられています。
各発達段階における「心理社会的危機」を適切な方法で解決できれば、生きていくうえで必要な力を身につけられ、個人の成長にも繋がるとされています。
そもそもエリクソンとは
エリク・H・エリクソンは、ドイツに生まれ、アメリカで活躍した心理学者です。
元々は、同じ心理学者の、ジークムント・フロイトの弟子として、発達心理学・精神分析の研究をしており、青年向けに心理療法をおこなってきました。
また、エリクソンは、「アイデンティティ」という言葉の生みの親でもあります。アイデンティティとは「自分が自分であること」や「自分が他者や社会から認められている存在である」という感覚のことです。
エリクソンの8つの発達段階を紹介
以下は、エリクソンの「心理社会的発達理論」で提唱されている「8つの発達段階」です。
- 乳児期(0〜1歳半)
- 幼児前期(1歳半~4歳)
- 幼児後期(4歳~6歳)
- 学童期(6歳~12歳)
- 青年期(12歳~20歳)
- 成人期(20〜40歳)
- 壮年期(40〜65歳)
- 老年期(65歳〜)
ここからは、それぞれの時期における課題や、課題を解決することによって獲得できるものについて詳しく紹介します。
乳児期(0〜1歳半)
乳児期は、授乳などのお世話をしてもらうことで、基本的な「信頼感」を獲得していく時期です。
周りの大人に養われて頼っていくうちに、他人を信頼できるようになる結果、希望を得られるといわれています。
しかし、この時期に十分なお世話をされず、頼ることができない場合は、周りに不信感を持つようになる傾向にあるとされています。
幼児前期(1歳半~4歳)
幼児前期になると、自分で排泄をコントロールしたり、歩き始めたりするなど、自らの力で挑戦するようになります。ときには失敗し、恥ずかしい思いをすることもあるでしょう。
子どもは、自分の行動をコントロールすることで、自律性を身につけられます。そして、自分でさまざまな挑戦をすることで、いろんな意思や感情を手に入れることができます。
そのため、幼児前期の子どもにあまり挑戦する機会を与えない場合、自律性が育ちにくくなる可能性があります。また、失敗を非難してしまうと、恥や疑惑の感情を抱くようになり、萎縮する恐れがあります。
幼児後期(4歳~6歳)
幼児後期は、子ども同士の交流が増え、周りに自己主張をしていくようになる時期です。
この時期に自主性や積極性を育めると、何かをするときの「目的意識」を持てるようになります。
しかし、自己主張して叱られることが多い子どもは、自分らしさを発揮することに罪悪感を覚えてしまいます。
幼児後期の子どもには、厳しく叱責しすぎないようにして、自ら行動する力を育むと良いでしょう。
学童期(6歳~12歳)
学童期は、子どもが小学校に通う期間に当たります。学校で知識を身につけて、学習する機会が多い時期です。
学童期の心理的課題は「勤勉性」です。子どもが自ら学んで物事を完成させたり、仲間と集団行動をして成功したりする体験を通して、自分が有能であると感じ、自尊心を得られます。
学童期に「他の子と比較して、自分にできないことが多い」と感じたり、周りから責められたりする経験が多いと、失敗しても頑張ろうという気持ちを失い、劣等感を抱くようになるといわれています。
お子さんの得意な分野や好きなことを見つけて、自主的に取り組めるような環境を作ることを心がけましょう。
青年期(12歳~20歳)
青年期は、「自分がどんな人間で、何者であるのか」と思い悩み、自分の「アイデンティティ」を探し始める時期です。
また、進学や就職など、自分の人生で選択しなければならない機会が増える時期でもあります。
将来の選択肢を考えていくなかで、自分のアイデンティティを確立することが、青年期の心理社会的危機とされています。
アイデンティティを確立できると、自分の価値観を信じて応えようとする忠誠心が芽生えます。
しかし、青年期に自分が何者か確立できないと、「同一性拡散」という状態になり、社会で活躍することが難しくなる可能性があります。
その結果、アイデンティティの確立を先延ばしにする「モラトリアム」の状態から、抜け出せなくなるかもしれません。
成人期(20〜40歳)
成人期は、恋愛や友人関係を通して、親密な人間関係を築こうとする時期です。
相手に受け入れられ、信頼する人との仲を深めることができれば、愛を感じられるようになります。
しかし、成人期に異性関係をうまく確立できず、否定される経験が続いてしまうと、孤独を感じてしまいます。そこから、心理的な成長もできなくなる可能性があります。
壮年期(40〜65歳)
壮年期は、次の世代を育てていくことに対して関心を持つようになる時期です。心理社会的危機として、「生殖性」の課題が挙げられます。
「生殖性」は、ただ自分の子どもを育てたいと思うだけに留まりません。
社会的な業績を得たり、創造をして次世代に何かを残したりすることも、壮年期の課題の一部です。
もし、次世代に貢献することができず、自分自身にしか関心が持てないと、自己没頭に陥る可能性があるといわれています。
老年期(65歳〜)
老年期は、今までの人生を総合的に見直す時期です。老年期の段階で、今までの自分の生活を肯定できると、知恵が得られます。
しかし、この時期に過去の人生を振り返って絶望し、老いに大きな不安を持ってしまうと、落ち込み、精神疾患に陥る可能性もあります。
エリクソンの発達段階を理解するメリット
エリクソンの発達段階を理解すると、成長過程にいるお子さんの行動がわからなくなったときに、悩みの解決の糸口になることがあります。
また、お子さんの成長段階に合わせて、教育のしかたを調整することもできるでしょう。
例えば、「学童期」は、物事を完成させるなど、成功体験を積むことが大切になります。学童期のお子さんの興味に合わせた学びを与え、「できた!」という体験をさせてあげましょう。その結果、お子さんが心理的にも成長できる可能性があります。
学童期にプログラミング学習を始めさせるのも一つの手
学童期のお子さんが成功体験を積むための方法の一つとして、プログラミング学習を始めてみるのも良いかもしれません。
幼いうちからプログラミング学習を始めるメリットとして、主に次の5つのメリットがあります。
- 小学校のプログラミング授業の事前準備ができる
- 今後の社会で必要な基礎教養が身につく
- 大学入試に役立つ
- 将来の選択肢が増える
- 創造性などさまざまな能力が育つ
小学校では、2020年度からプログラミングが必修化されました。幼いうちからプログラミングの基礎に触れておくことで、小学校に入る前の事前準備ができるでしょう。
また、近年IT人材の需要は増えており、これからの社会を生き抜く教養として、プログラミングに触れておくことは大切です。将来の選択肢も増える可能性があります。
さらに、2024年度より、大学入試の共通テストでもプログラミングを含む「情報」が新教科として追加されることが決まっています。
現代では、プログラミングスキルが求められているのはIT業界に限りません。プログラミングやITの知識は、さまざまな業界で重宝されます。よって、将来の選択肢の幅が広がると考えられます。
プログラミングの基礎を身につけることで、物事を順序立てて考えることができる「プログラミング的思考」など、さまざまな能力が育ちます。
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また、学習が進むにつれプログラミングにおける重要な概念を学ぶことができる設計になっており、論理的に考える力もどんどん鍛えられていきます。
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まとめ
エリクソンの発達段階は、人間の生涯のなかで出てくる心理的課題や、それを達成したときに獲得する要素を分類したものです。
内容を理解することで、お子さんの成長段階に合わせた教育ができるようになるなどのメリットがあります。
子どもの成長や教育面で不安が出てきた際には、エリクソンの発達段階の考え方を活用してみましょう。
なお、お子さんが学童期に成功体験を積むための手段の一つとして、プログラミング学習を始めさせることをおすすめします。
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